透析患者におけるSDB(睡眠呼吸障害)の現状と対応 ~簡易型ポリソムグラフィーを用いて~
演者 木村由紀
はじめに
透析患者は、SDBのハイリスクグループである。それには尿毒症や虚血性心疾患、高血圧などが大きく関与しているとの報告がみられる。そのため当院では、SDBのスクリーニングとして簡易型ポリソムグラフィーを用いてその有用性及び、SDBの実態を調査したので報告する。
対象および方
検査の承諾が得られた、当院維持透析患者127例を対象に 被験者が簡易型PSGを自宅に持ち帰り、透析後の終夜測定を実施し、Epworth眠気テストを問診に用いて、日中傾眠の自覚の程度を調べた。
透析患者はさまざまな重複疾患を合わせ持っているなどの理由から、マニュアル解析の結果、AHI≧30の明らかな重症SAS群(22例)のデーターによる検討を行った。
結果
- 127例のうちAHI≧5を満たした患者は118例(92.9%)であった。
- ESS判定では回答の得られた96例の平均は(5.7)であった。
- 重症SAS群22例による、データーの各平均値は、AHI(55.7) BMI(20.5)CTR(55.1%)SPO2(79.8%)ESS(9.2)であった
項目 | 基準 | 22例の平均値 |
---|---|---|
BMI | 肥満>25 | 20.5 ±2.6 |
ESS点 | SDB>11点 | 9.2±4.8 |
SpO2 | 79.8±10.3 | |
CTR | 55.1±5.6 | |
AHI | SAS>5 | 55.7±15.1 |
Kt/V | 1.24(AHI≧30) 1.30(AHI<5 |
高血圧82%・糖尿病59%・チェーンストクス呼吸77%
nonSAS群と重症SAS群の、kt/v比較では、重症SAS群(1.24)
nonSAS群では(1.47)であった。
合併症として高血圧(82%)糖尿病(59%)
睡眠時におけるチェーンストークス呼吸は(77%)であった
まとめ
- 透析患者のSDBにおけるSAS有病率は高かった。
- ESS判定により、自覚のないSDBの存在が明らかであった。
- 当院維持透析患者の平均BMI=(20.9)と、基準値を下回り、 重症群との差はなく、肥満との相関関係は認められなかった。
- 高血圧、糖尿病を高率に合併。
- kt/vの比較検討では、重症SAS群はnonSAS群に比べ低値であった。
考察
透析患者においては、SDBを高率に合併するも、眠気についての主観的症状が乏しく、ESS判定での重症度評価は困難であると考えられる。
現在、13名が対処療法を受け入れ継続しているが、肥満ではない溢水などの関与の推測によりWtコントロールによるSDB改善も期待できると思われる。
塩見氏は多臨床症状におけるSDBの鑑別や治療へのアプローチは日常診療の一つとして重要と述べている。
結語
簡易型PSGを用いてのスクリーニングはSDBの分析において 重要なパラメーターの一つとして有用であり、透析患者におけるSDBの早期発見・治療介入の重要性が示唆された。
※本発表では、透析患者におけるSDBの実態を考察・知見を交え 報告いたしましたが、このデーターを基に、更なる調査、対応策などを検討して行きたいと思います